精索静脈瘤とは何か — 病態・症状から手術準備まで体験談で解説

精索静脈瘤とは何か — 病態と原因

精索静脈瘤とは、精巣(睾丸)につながる静脈——精索静脈——に静脈瘤(こぶ状のふくらみ)ができる病気だ。簡単に言えば、足に起こる下肢静脈瘤と同じような状態が、精巣まわりの血管に起きている。

通常、精巣内の血液は静脈を通って心臓へ戻っていく。ところが静脈の弁が正常に機能しなくなると、血液が逆流し、精索静脈内に血液がたまってしまう。これが静脈瘤だ。血液がたまることで精巣周辺の温度が上昇し、精子の産生や質に悪影響を与えると考えられている。

精索静脈瘤は男性不妊の原因として最も多く、不妊男性の約35〜40%に見られると言われている。また、左側に発生しやすいという特徴がある。これは左の精索静脈が左腎静脈に直角に合流する解剖学的な構造上、血液が逆流しやすいためだ。

精索静脈瘤の症状 — 自覚がないケースも多い

精索静脈瘤の厄介なところは、自覚症状がない、もしくは非常に軽いことが多い点だ。

代表的な症状としては以下のものが挙げられる。

  • 陰嚢(いんのう)の鈍痛・違和感:長時間立っていたり、運動後に重さや引っ張られるような感覚を覚えることがある。
  • 陰嚢内の静脈の怒張(どちょう):触れるとミミズのような血管の膨らみを感じることがある。重症の場合は視認できることも。
  • 精巣の萎縮:長期間放置すると、精巣が小さくなることがある。
  • 精液検査での異常:精子濃度の低下、運動率の低下、奇形率の上昇などが見られることがある。

僕の場合も、大きな自覚症状はなかった。「なんとなく違和感がある気がする」程度で、日常生活に支障があるほどではなかった。精液検査の結果が芳しくなく、泌尿器科を受診した際に初めて「精索静脈瘤がある」と診断された。

なぜ手術を選んだのか

精索静脈瘤の治療法はいくつかあるが、根本的な治療は手術(精索静脈瘤手術)だ。静脈を結紮(けっさつ)、つまり縛って血流を遮断し、逆流を防ぐ。

手術によって精液の質が改善されるケースは多く、自然妊娠率の向上も報告されている。僕の主治医からも「手術を受けることで精子の状態が改善する可能性がある」と説明を受け、迷わず手術を選んだ。

「手術」という言葉を告げられたとき、不安よりも先に前向きな気持ちが湧いてきた。「これで変わるかもしれない」「やれることをやれる」——そんな感覚だった。不安がなかったといえば嘘になるが、それよりも、その先にある未来に向かって走り出す気持ちのほうがずっと大きかった。

前日まで普通に働いていた

手術当日に入院、という流れだったので、前日まで普通に仕事をしていた。

「手術の前日くらいゆっくりしたら」と言われそうだが、正直なところ、仕事をしているほうが余計なことを考えずに済んだ。緊張や不安を感じる暇もなく、気づいたら当日の朝を迎えていた。これはこれで、僕には合っていたと思う。

手術前に特別な準備が必要だったわけでもなく、食事制限や入浴制限などは当日前夜からの指示に従うだけだった。普段通りの生活をしながら、その日を迎えられたのは、精神的にもよかった。

手術1週間前:麻酔科の診察

手術の約1週間前に、麻酔科の事前診察があった。

「麻酔科」と聞くと少し身構えてしまうかもしれないが、内容はとてもシンプルだった。主に確認されたのは、心臓や全身の健康状態についてだ。「心臓に問題はありますか?」と聞かれ、「大丈夫です」と答えると、担当の先生から「問題ありませんよ」とすぐに安心できる言葉をもらえた。

事前に「あれこれ検査されるのかな」と少し身構えていたのだが、拍子抜けするくらいスムーズに終わった。もちろん事前に血液検査や心電図などの検査は別途行われていたので、その結果をもとに麻酔科の先生が確認してくれる、という流れだったようだ。

この診察で「手術は問題なく受けられる」というお墨付きをもらえたような感覚があり、むしろ安心感が増した。不安なことがあれば、ここで何でも聞いておくのがいいと思う。

手術室スタッフとのやりとり — 寒がりと痛がりを正直に伝えた

手術当日、手術室に入る前後に、担当の看護師さんからいくつか確認事項があった。

その中で印象に残っているのが、「寒がりですか?」という質問だ。手術室は温度管理のために室温が低めに設定されていることが多い。体を冷やすと血圧が下がったり体に負担がかかったりするため、事前に確認してくれるのだという。

僕は寒いのが一番苦手なので、迷わず「寒がりです」と伝えた。すると毛布を用意してもらえたり、温かい環境を整えてもらえたりと、しっかり配慮してもらえた。遠慮せず正直に伝えてよかったと思っている。

もうひとつ、自分から「痛み止めは最強に効かせてほしい」とお願いした。これも恥ずかしがらずに言って正解だった。痛がりであることを正直に伝えると、術後の痛み管理についても丁寧に説明してもらえた。自分の体のことは自分が一番わかっている。遠慮しないことが大事だと実感した。

手術前に伝えておいてよかった3つのこと

体験を振り返って、手術前に伝えておいてよかったと感じたことを整理しておく。

  • 寒がりであること:手術室は寒い。事前に伝えると保温の対応をしてもらえる。
  • 痛みに敏感であること:術後の痛み管理に反映してもらえる。遠慮しなくていい。
  • 心配なことは麻酔科で全部聞くこと:麻酔や手術への不安は、麻酔科の診察のタイミングで解消しておくと安心できる。

医療スタッフは「患者が快適に手術を受けられるよう」サポートするのが仕事だ。遠慮や気遣いは不要で、自分の状態を正直に伝えることが、結果的に安心につながる。

まとめ — 不安より、前に進む気持ちを大切に

精索静脈瘤は、男性不妊の中で最も治療効果が期待できる原因のひとつだ。自覚症状が乏しいからこそ、精液検査の異常をきっかけに発見されることが多い。心当たりのある方はまず泌尿器科を受診してみてほしい。

手術を前にして、僕が感じていたのは不安よりも期待だった。「これで何かが変わるかもしれない」という気持ちが、準備期間を通じてずっと支えになっていた。前日まで普通に働き、麻酔科診察もスムーズに終わり、手術室スタッフに自分の体のことを正直に伝えた。それだけのことだが、一つひとつが「ちゃんと準備できた」という自信につながっていった。

手術当日・入院中の様子については、次の記事で書いていく予定だ。

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